個人再生ってどんな手続き?

「個人再生ってどんな制度なの?」
「個人再生のメリット、デメリットは?」

「個人再生」とは「任意整理」、「自己破産」などと並ぶ、借金を整理する方法の1つです。あなたが借金の返済に困った際、裁判所に手続きを申請することで借金を大幅に減額してもらうことができます。個人再生では、借金の支払いそのものが免除されるわけではないのですが、借金を1/5~1/10程度まで圧縮することが可能で、一定条件を満たせば自宅を残すこともできます。また、社会的なイメージや手続きによるデメリットも自己破産と比べると低い点が特徴です。そのため、個人再生は「借金を減額さえしてもらえれば、まだ何とか支払い続けられる」、「マイホームは残したい」、「自己破産だけは何としても避けたい」といった人向けの制度ともいえるでしょう。
いっぽう、個人再生には、裁判所の発行する「官報」への掲載や、信用情報機関のデータベースに事故履歴として登録され、いわゆる「ブラックリストに載る」というデメリットもあります。ブラックリストに載ってしまうと、5年~10年程度の間は新たにローンを組んだり、クレジットカードが作れなくなったりします。したがって、これから個人再生をしようと検討されている人は、こうしたメリットやデメリットもよく考えた上で判断するべきでしょう。
そこで今回は、個人再生の内容についてわかりやすく解説したいと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。

個人再生の種類と申請に必要な条件をわかりやすく解説

個人再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者再生」という2種類の手続きがあり、申請する人の条件によって、どちらの手続きで進めるのか異なってきます。

●小規模個人再生とは
「小規模個人再生」とは、主に個人事業主を対象にした個人再生の手続きです。しかし、現在ではサラリーマンなども含めたほとんどの人が、「小規模個人再生」によって個人再生するのが一般的になっています。後述する「給与所得者等再生」と比べ、借金の圧縮率が大きい点が特徴です。
なお、小規模個人再生を申請するための条件は以下となります。
・個人であること
・将来において、継続的、反復的な収入を得られる見込みがあること
・住宅ローンを除いた借金総額が5,000万円以下であること
・原則として3年間で、法律で定められた最低弁済額(以下で説明)か、保有している財産の合計額のいずれか高い方を支払えること
・再生計画の書面審査の際、カード会社(クレジットカード会社・消費者金融・銀行)の1/2以上の反対がなく、かつ異論があるカード会社の借金額の合計が借金総額の1/2を超えていないこと
個人再生は、借金額自体は圧縮してもらえますが、あくまでも借金を返済していくものです。したがって、まったく収入がない無職の場合や、借金の総額が5,000万円以上とあまりにも大きい場合には適用されません。
また、小規模個人再生における、借金総額(住宅ローンは除く)に対する最低弁済額は以下の通りです。
・100万円未満        :全額
・100万円以上500万円以下  :100万円
・500万円以上1,500万円以下 :借金総額の1/5
・1,500万円以上3,000万円以下:300万円
・3,000万円以上5,000万円以下:借金総額の1/10
「最低弁済額」とは、簡単に言うと「借金の一部を消してあげるので、最低これだけは返済してくださいね」という法律で定められた金額というわけです。たとえば、借金が300万円だった場合であれば100万円、4,000万円なら400万円まで減額してくれることになります。

●給与所得者等再生とは
「給与所得者等再生」は、サラリーマンなどの会社員を対象にした手続きです。給与所得者等再生で減額される借金額は、前述した「小規模個人再生」の場合の最低弁済額と、あなたの収入合計から税金や生活費などを差し引いた金額である「可処分所得額」の2年分を比較し、どちらか多い方の金額となります。
たとえば、借金が700万円、月収30万円、税金、生活費が20万円という人の場合、2年分の可処分所得額は、「(30万 – 20万)× 24ヶ月 = 240万円」となります。
いっぽう、最低弁済額は「700万円 × 1/5 = 140万円」となるため、可処分所得額の方が高いということになるため、240万円を支払うことになるわけです。
なお、給与所得者等再生する場合には、再生計画案に対するカード会社の同意は不要となります。ただし、小規模個人再生と同じ条件に加え、
・収入が給料などの変動幅が少ないこと
・前回の給与所得者等再生、および自己破産による免責(借金がゼロになること)決定の確定日から7年以上経過していること
という条件も必要になります。
しかしながら、現在では「給与所得者等再生」を実施する人は少なく、より借金の圧縮率の高い「小規模個人再生」を行う人がほとんどです。

●どちらの手続きを選ぶべきなのか。その理由をわかりやすく解説
ここまでの説明で、小規模個人再生と給与所得者等再生の違いが何となく理解できたかと思いますが、「結局、自分はどちらの手続きを選ぶべきなの?」という人もいるでしょう。
まず、正社員や契約社員、アルバイトやパートといった勤務形態で、毎月の収入の変動幅が小さい人であれば、給与所得者等再生の手続きを行うことになります。いっぽう、個人事業主や自営業といった人の場合には、小規模個人再生が適用されます。
また、年金を受給されている人の場合は、どちらの個人再生を選択可能です。ただし、生活保護を受けている人は、個人再生することができません。
しかし、あくまでこれらは前提としての話であり、実際にはほとんどの人が小規模個人再生の申し立てを行います。その理由は、ごく一部のカード会社以外、反対する例はないため、より借金の圧縮率が大きい小規模個人再生を選ぶ方が、負担が軽くなるからです。したがって、まずは、「小規模個人再生」の申し立てをできないか弁護士や司法書士に相談してみるのがよいでしょう。

●個人再生の申し立てができても裁判所に却下される場合
前述した各種条件を満たし個人再生の申し立てができたとしても、次の場合には再生手続きが裁判所に取り下げられてしまいます。
・再生手続きをする費用が、裁判所に前もって納められていない場合
・再生計画によりあなたがカード会社に支払う返済額よりも、清算価値(破産時にあなたの財産をカード会社に配当した金額)の方が多いと見込まれる場合
・再生計画案の作成、および可決の見込み、また、再生計画が認可される見込みがないことが明白な場合
・再生手続き開始の申し立てが、不正な目的や手法で行われた場合

個人再生のメリット

個人再生には、借金額の大幅な圧縮を含めたくさんのメリットがあります。以下で、詳しく説明したいと思います。

●借金が大幅に減る
個人再生のメリットは、何といっても借金が大幅に減額されることでしょう。借金の減額幅については先ほど説明しましたが、一点だけ補足しておきたいことがあります。実は、個人再生であなたが返済するべき金額は、先ほどの基準だけでは決定しない場合があります。さらに、もう1つ「清算価値」という条件を考慮しておく必要があるのです。
清算価値とは、あなたが自己破産したときに、すべての財産を清算し現金化した場合に想定される価値のことです。具体的には、自宅や車、銀行口座の預金、保険の返戻金、株式などの現金価値のことをさします。なお、個人再生ではカード会社の利益を守るという観点から、最低でも清算価値の金額以上は最低弁済額として返済することが義務づけられています。これを「清算価値保障の原則」といいます。
まとめると、清算価値が、最低弁済額や2年分の可処分所得額よりも多くなる場合、借金の返済額には清算価値の合計額が適用されるというわけです。
先ほど、給与所得者等再生の際に使用した例で説明すると、
借金が700万円、月収30万円、税金、生活費が20万円という人の場合、
可処分所得額:240万円
最低弁済額:140万円
ということになります。
しかし、あなたが清算すると300万円の価値がある車を持っていた場合には、清算価値となる300万円がもっとも多い金額となるため、この金額を支払うことになります。したがって、300万円を3年間で返済していくためには、「¥3,000,000 ÷36 ≒¥83,333」となり、毎月8万3千円程度を支払っていくことになります。

●自宅を手放す必要がない
自宅を手放さなくてよいという点も、個人再生の代表的なメリットといえるでしょう。個人再生には「住宅ローン特則」と呼ばれる個人再生の手続きを行っても、一定の条件を満たすことで住宅ローン付きの自宅を残せるという制度があります。そのため、自宅を失うことなく経済的な再生をすることが可能です。ただし、住宅ローンそのものは減額対象にはならないため、これまで通り返済する必要があります。
ちなみに、住宅ローン特則を利用するための要件は以下となります。
・個人再生手続きの要件を満たしていること
・住宅の購入価格、またはリフォーム代金のローンであること
・住宅に住宅ローン以外の抵当権(*1)が付いていないこと
・保証会社による代位弁済(*2)から6ケ月以内であること
・あなたが所有する居住目的の住宅であること
・住宅ローンの残高の方が現在の住宅売価より高いこと
ただし、住宅ローンの支払いが滞っており、「期限の利益を損失」している場合には、カード会社と事前協議することで期限利益を復活させたり、住宅ローンの支払い期間を延長してもらえたりするケースもあります。なお、「期限の利益」とは、返済期限が来るまでは借金の返済をしなくてもよいということです。したがって、「期限の利益の損失」とは、文字通りあなたが期限の利益を喪失することで、たとえば、住宅ローンの支払いに滞納があった際、契約で定めた滞納回数の上限を超えた場合には分割払いが認められなくなり、カード会社があなたに対してローン残額を一括請求できるようになるということになります。

抵当権(*1):抵当権とは、カード会社が住宅ローンの担保として該当する住宅の所有権を持つことで、ローンの返済が滞った際に売却して借金を回収できるという権利のことです。
代位弁済(*2):代位弁済とは、あなたがローンの返済ができなくなった際、ローンの保証会社が借金の返済を肩代わりしカード会社に一括返済を行うことです。

●カード会社からの取り立てが止まる
個人再生の手続きをしている旨をカード会社に通知すると、借金の取り立てがストップします。また、カード会社による給与の差し押さえといった強制執行も中止させることが可能です。このように、借金の請求や取り立てがこないことによる精神的な安心感も、個人再生のメリットの一つといえるでしょう。

個人再生のデメリット

個人再生には、メリットだけでなく当然デメリットもあります。

●ブラックリストに載る
個人再生をすると、CICやJICCといった信用情報機関と呼ばれる機関のデータベースに事故情報として記録され、いわゆる「ブラックリストに載った」状態となります。信用情報機関とは「個人信用情報」というデータを管理する機関です。また、個人信用情報とは、ローンやクレジットといった借り入れの契約や申請に関する情報のことで、あなたとカード会社の取引した事実をすべて登録した個人情報となっています。カード会社は、顧客の「信用」を判断するためこの情報を参考にしているのです。
なお、信用情報は、CICやJICCなどに加盟している会員も閲覧可能なため、事故情報の記録される5年~10年程度の間は、新たなクレジットカードの発行や、借り入れができなくなります、さらに、ローンの保証人になることもできなくなります。ただし、
信用情報機関に登録された事故情報は、通常5年~10年程度で抹消されますので、それ以降であれば、再びクレジットカードの発行や、ローンを組んだりできるようになります。

●官報に載る
個人再生すると、政府の刊行物である「官報」に、あなたの氏名や住所、個人再生の事実などが掲載されることとなります。官報とは政府が発行する新聞のようなもので、裁判に関することなどが掲載されているものです。ただし、一般の人や企業が官報を目にする機会はほとんどないため、官報に掲載されたことが原因で個人再生したことが家族や知人にバレる確率は非常に低いでしょう。
一点、官報に載ることによるデメリットとして挙げられるのが、闇金業者などからあなたに営業の連絡が来る可能性があることでしょう。闇金業者は、借金を整理してお金に困っている人を新規顧客にするため、日ごろから官報をチェックしています。よって、個人再生すると、闇金業者などから連絡があったり融資の案内が届いたりする場合があります。闇金業者は、お金に困って個人再生したあなたを最大の顧客候補として捉えて営業してきますので、都合の良い言葉に騙されないように気をつけましょう。

●借金があれば誰でも利用可能というわけではない
先述した通り、個人再生をするためにはいくつかの条件を満たす必要があります。よって、きちんとした仕事に就き一定の継続収入がある人や、3年以内に返済できる能力のある人でないと個人再生の利用は厳しくなってきます。ですので、無職や失業中の人の場合には、個人再生をすることは非常に難しいといえるでしょう。したがって、個人再生は、借金があれば誰でも利用できるというわけではないのです。

●手続きが複雑で時間がかかる
個人再生の手続きは裁判所を介す必要があるため、手続きのルールも複雑で必要書類も多く、どうしても手間と時間がかかってしまいます。特に、再生計画を立案する作業は、とても複雑なため個人で行うのは非常に厳しいといえるでしょう。ですので、個人再生の手続きは、弁護士や司法書士に依頼して実施するのが一般的です。依頼後、あなた自身が手続きをする必要はなく負荷は大きく下がり、スムーズに手続きを代行してもらえます。

●ローンの保証人になっている場合には保証人への影響が甚大
個人再生することで借金を大幅に減額できるのは、申し立てをしたあなただけとなります。したがって、ローンなどの保証人は非対象となるため、保証人付きの借金を個人再生すると保証人に請求が行くことになり、カード会社は保証人に対し借金の一括返済を要求します。そのため、親や兄弟、親戚や友人、会社の上司などが保証人になっている場合には、謝罪や事情の説明をきちんとした上で理解を得る必要が出てくるでしょう。もちろん、保証人も個人再生することはできますが、多大な迷惑をかけることには違いないので、保証人付きの借金がある場合には注意しなくてはなりません。

手続きの流れ(横浜地方裁判所の場合)

本章では、個人再生の具体的な手続きの流れについて説明します。裁判所によって手続きの運用は異なりますが、今回は、横浜地方裁判所に申し立てた場合を想定し解説したいと思います。
・あなたが個人再生を弁護士、司法書士に依頼。
・弁護士(司法書士)がカード会社に、あなたから個人再生の手続きを代行したという「受任通知」を発送。
└カード会社に受任通知が届いた段階から、あなたへ借金の取り立てがストップします。ただし、住宅ローン(住宅ローン特則を適用の場合)や家賃、電気やガスなどの公共料金の支払いは続きます。また、新たな借り入れやクレジットカードの利用もできなくなります。よって、料金の支払いは、現金かプリペイド式の電子マネーなどで行わなくてはなりません。
・申立書を作成してもらうため、弁護士(司法書士)と打ち合わせ実施。
└まず、弁護士(司法書士)があなたの生活状況と、再生計画に基づく支払いが可能なのか把握するため、3ヶ月間の家計簿や清算価値チェックシートなどを作成します。また、所有している不動産などの見積もりや住民票などの各種必要書類も集める必要もあります。
・弁護士が裁判所に個人再生の申し立てを実施。
└申立書の不備や書類不足などがある場合には、裁判所から弁護士に指示があります。なお、横浜地裁では、申し立ての代理人が弁護士の場合には、個人再生委員(裁判所が指名する再生手続きが適正に行われるように監督する人)の選任はされません。いっぽう、申立書の作成を司法書士に依頼した場合には、横浜地裁が個人再生委員を選任するため、別途費用として18万円を準備する必要があります。
・再生手続き開始決定。
└申立書に不備がなく書類が揃えば、再生手続きが開始します。なお、横浜地裁の場合であれば、あなたが裁判所に直接出頭する必要もありません。
・積立テストの実施。
└積立テストとは、再生計画で毎月支払う金額が、あなたが実際に支払うことができるのかを確かめるテストです。再生手続き開始決定から再生計画案を提出するまでの間、あなたが指定した銀行口座に決められた金額を入金することができるのか確認されることとなります。そして、この結果も踏まえ、弁護士があなたと打ち合わせをして、再生計画案を作成していきます。
・弁護士(司法書士)が再生計画案、および積立テストの通帳コピーを裁判所に提出。
└再生計画案と、積立テストの通帳のコピーの内容を裁判所が確認し、問題なければカード会社による書面決議に付する決定がなされます。
・カード会社による書面決議の実施。
└前述した通り、小規模個人再生においては、カード会社の1/2以上の反対がなく、かつ異論があるカード会社の借金額の合計が借金総額の1/2を超えていないことが条件となります。
・裁判所による再生計画認可決定
└再生計画に基づいて、あなたが原則3年間で借金を返済していきます。

個人再生を選択すべき人

最後に、数ある債務整理の中で、特に個人再生をおすすめしたい人の特徴について説明します。
個人再生は裁判所に申し立てを行い借金の一部を帳消しにしてもらい、残りを原則3年間の分割払いにしてもらうという制度です。そのため、個人再生は、家や財産を手放したくないという理由で自己破産を回避したい人や、減額された借金を分割で支払うことであれば問題ないという人におすすめの手続きといえるでしょう。
よって、個人再生をしようとする人は、
・住宅(財産)を守りたいか
・毎月の返済額を軽くすれば生活していけるか
という2点について主に検討し、判断していくのがよいでしょう。

まとめ

・個人再生すると、借金を1/5~最大で1/10程度まで圧縮することが可能で、一定条件を満たせば自宅を残すことも可能。
・個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類がある。
・個人再生のデメリットは、「ブラックリストに載る」ことと「官報に載る」ことなどが挙げられる。
・個人再生の手続きの流れは、裁判所ごとに異なる。
・個人再生は、家や財産を手放したくないという理由で自己破産を回避したい人や、減額された借金を分割で支払うことであれば問題ないという人におすすめの手続きといえる。
・個人再生をする人のほとんどが小規模個人再生の申し立てを行う。

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